Rumy!です。今回は「短編小説」です。長編小説をじっくりと時間をかけて読み倒すのも良いのですが、ささっと読める短編も捨てがたいですよね。
短編だからこそ、心に残る・・ということもあるわけで・・。余白があるってことなのかしら?
今回は短編小説集【イラクサ】アリス・マンロー著
アリス・マンローって知らなかったんです。
でも、この装丁が美しかったのと、「チェーホフの正式な後継者」、「短編小説の女王」って・・。
しかもノーベル文学賞もらってるんですね。知らなくて失礼しましたっ!
それで読んでみると・・
人間の感情って、国籍や人種を超えるって、頭ではわかっていても、なかなか実感はできません。良い海外の映画を見たときには感じますが、小説でその体験ができたときは嬉しくなります。本当にその場面、その感情が痛いほど実感できるような部分が、たくさんある小説でした。
「そうだ。わたしたちがまた会ったとしても、同じことだろう。会わなかったとしたって。使い物にならない、身のほどをわきまえた愛(本物じゃないという人もいるだろう、くびり殺されたり、悪い冗談になってしまったり、哀れにも磨滅してしまう危険を、決して冒さないのだから。)危険はひとつも冒さないけれど、それでも甘い滴りとして、地下資源として生き続ける。その上に、この新たな沈黙の重みを乗せて。この封印を。」イラクサより。
思いがけず少女時代の恋の相手と再会し、束の間の甘い思い出に浸り・・でも人生の哀しみと苦しみに出会ってしまう。この切なさは大人じゃないと分からなかったかも・・。
身のほどをわきまえない、熱情に駆られた恋愛は、しばしば「事件」を生み、小説のネタになりそうだけれど。ほとんどの人は、身のほどをわきまえて、情熱を”地下資源”として隠し持ち、日常を生きていきます。
マンローは何気なく過ぎていく人生の中での感情のゆらぎや慰めを淡々と温かく描いているように思います。
春の夜明け、夏の昼下がり、秋の夜更け、冬の朝に読み返したい一冊です。
新潮クレスト・ブックス ¥2,400(税別)